電車に乗ると時折こんなアナウンスが流れます。
「お年寄りや体の不自由な方、小さなこどもを連れている方、妊娠中の方には席をお譲りください。皆様のご協力をお願いします。」
わざわざ言われるまでもない当然のことだと思っていました。
が、しかーし、2006年日本の現状は、大の大人にこんなことを言っても無駄みたいですよ。
両親学級で知り合った妊婦友達は一様に「電車で席を譲ってもらったことなんかない」と言います。妊娠6・7ヶ月のおなかが十分大きくなった時点での発言でした。
また、出産経験者からは、「譲ってもらうどころか意地悪された」という声さえもあります。
バスの優先席に座っていたら、おなかの大きさに気付かなかったらしいオッサンが「若いくせに座ってんじゃない。」と怒り出したり(こういう人はそれに気付いても決して謝らない)、足を広げて座っていたオッサンの隣の空席に座ろうとした妊婦さんが肘鉄くらわされたり(このときは車内の別のおばさんが「コッチに来て座りなさい」と親切にしてくれたそうだけど)。そういえば、私も意地悪されたのはやはりおじさんだったなぁ。
こういうオッサンに限って自分が年老いたら「席をゆずらんとは何事だ!」って怒るんだろうな。
ここまで読んで、最初から優先席に座ればいいじゃんって思う人もいるでしょ。ところが優先席には、仕事はきっちりするんだろうな(想像)と思わせるバリっとしたスーツの中年男性と学生風のお兄ちゃんたちが座るんですよ。この人たち大体眠っているから優先席に座りたい人が乗ってきても気付かない。そーとーお疲れなんでしょーねー。私は妊娠するまで優先席に座ったことなんてなかったけどなぁ。
私はというと、7ヶ月になったときに初めて席をゆずってもらいました。それ以来、きょうまでに5人の方が私に席をゆずってくださいました。(このブログに書こうと思って数えてたの)
20代・30代の女性が3人、20代の男性・40代の男性という内訳。この40代の男性に至っては、ほんの少し私がつり革につかまって立っていただけなのに「あ、気付かなくて失礼しました。どうぞ、座ってください。」とおっしゃって席を譲ってくださいました。大きなおなかで立っていると辛いし、ぎゅうぎゅう押されるとおなかをかばいきれないことがあります。だから、こんな親切にあうと、毎回ありがたくて本当に涙がにじみます。「ありがとう。」を何度でも繰り返したくなるんです。
実は妊娠前、「50代・60代の女性が出産経験もあるからか親切に譲ってくれることが多いよ。」と聞いていました。ところが、まったくそんなことはありません。びっくりするのは、まず私のおなかに気付いてじーっと「何ヶ月ぐらいかしらね?」という目で観察した後、本を取り出して読み始めるか狸寝入りを決め込む人が多いこと。これ、50代の女性のパターンです。疲れてらっしゃるんでしょうけれどもね。気付かれないよりも、こうして拒否される方が悲しいことだなと思いました。こんな経験を重ねて「電車では席を譲ってもらえないもの」と思うことにしてたんです。イマドキの若い人の方がずっと親切ですよ。
さて、上記の私の恩人5人の方には、ある共通点があります。何かわかります?
「全員ヘッドフォンステレオをつけていない」
便利で小さなメディアがたくさん登場して、ほとんどの人がイヤホンを耳に突っ込むようになりました。更に本でも広げれば、まるで自分の部屋にいるような感覚になれます。周囲の人が消え去ってしまうんですね。混んだ電車のストレスを緩和するためなんでしょうか。もちろんこうなると周りに無関心になります。どんなお年よりが乗って来ても、杖を突く人が乗ってきても気付きません。もしかしたら近くで殺人が起こっていても気付かないんじゃないかとさえ思います。
敬愛する先輩がこう言ってたことを思い出しました。「海外にでかけると、お年寄りが乗って来た途端、何人もの人が立ち上がる(たとえパンクなファッションをした若者でも)光景をよく見かけるわよ。まったく、日本は嘆かわしい」と。みんな心に余裕がないんですね。
妊娠は私に世の中をこれまでと違った視点から見るチャンスをくれました。
ああ、 そうそう、前述の私の恩人5人の方にはもうひとつの共通点があるんですよ。
席を立った後、必ずにっこり笑ってくれること。ほんと涙出ますよ。



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